今回の旅は、二月に行くことになっていたので、おそらく二月のヨーロッパというのは恐ろしく気候が寒いことが予想された。
かつて、ヨーロッパを旅したときに、十二月のクリスマスの時期にチェコにいたのだが、外は大雪が降っていた。私は長靴などをもっていなかったけれど、幸い、靴の中に雪が入り込んできて、足が悴んで冷えるということなどもなかった。
しかし、長ズボンをはいていて、その長ズボン一枚きりであるとひどく足が冷えたことを覚えている。上半身はシャツを二枚着て、セーターをその上に着込み、それからジャンパーを着ていたので寒さに苦しむことは無かったが、足がやたらと寒かった。
同宿のオランダ人のバックパッカーは、ズボンを二枚重ね着していて、そのうちの一枚はジャージ風のズボン、もう一枚はスラックスをはいていた。
さすが、寒い国に住み慣れているだけあると感心したものであった。日本の東京も真冬はずいぶんと寒くなると思うけれども、ヨーロッパの北国の寒さに較べると日本の寒さは、それほど騒ぐことはないのではないかと思ってしまうほどだ。
そんなわけで、私は旅の服装を整えるべく、豊洲のららぽーとへと向かった。
何も豊洲に行く必要はないようにも思えた。というのは、私が住んでいるのは、東京の中心部にほど近い場所で、都会のど真ん中に位置しているような場所であったから。新宿や池袋にもかなり近い。
新宿や池袋に行けば、旅のための防寒具を売っている店などはいくらでもあるように思われた。
しかし、それでも私はなぜか豊洲へと向かった。
都会の人ごみを避けたかったのかもしれない。郊外ののんびりとした店で、ゆっくりと買い物を楽しみたかった。
豊洲につくと、だだっ広い道路と、馬鹿でかいビルが点々と並んでいる、よく言えば近未来的、悪く言えば殺風景な風景が見られた。だが、この街は清潔感を感じさせる。都市の猥雑さ、人間の臭いというものはあまり感じられないが、清潔であることを最上の美徳として誇っているような街だと思った。
私はららぽーとに行くと、その店で6千円ほどするジャンパーを買った。服を買うときくらい私の人生で頭を悩ませることはない。何しろ、優柔不断な性格である。いや、私は自分自身で自らの性格が優柔不断であることを自覚している。そうであるから、何事においても「決定する」ということが特に苦手であった。
そうであるから、この非常にシンプルな、「服を買う」という行為においてさえ、気持ちは千路に乱れていく。私はやっとのことで、襟の部分にフサフサした毛のついたカーキ色のジャンパーを手に入れた。
着てみたときに、少々窮屈な感じもしたのであるが、おそらく着慣れてくればそんなに気にならなくなるであろうと無理矢理自分自身を納得させて、そのジャンパーを購入することにしたのだ。
ジャンパーのほかに、靴下を四足ほど購入し、それから股引がないかどうか探したが、股引を発見することはついに出来なかった。股引があれば、ヨーロッパの寒さというものも多少はやわらぐに違いないという風に私は考えたのであったけれど。
※ホームページでもヨーロッパ旅行の情報を載せています。あわせてこちらもどうぞ。
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